トラウマとその影響

過去のことなのに、今も影響を受けていると感じることはありませんか

「もう終わったことなのに、ふとしたきっかけで思い出してしまう」

「頭では大丈夫だと分かっているのに、身体が緊張したり怖くなったりする」

「相手の表情や声の調子が変わると、必要以上に身構えてしまう」

「嫌なことがあっても、その場では何も言えず、身体が固まってしまう」

「過去のことと今の人間関係が、どこかでつながっているような気がする」

過去のつらい体験は、出来事が終わったあとにも、さまざまな形で現在の生活に影響することがあります。

一方で、「こんなことをトラウマと呼んでいいのだろうか」と迷う方もいます。

大切なのは、無理に「これはトラウマだ」と決めることではありません。

過去に何があったのかだけではなく、その体験が今の自分にどのような影響を残しているのか。

そこに目を向けることが、自分に起きていることを理解する手がかりになることがあります。

トラウマの影響は、さまざまな形で現れることがあります

トラウマというと、事故や災害、暴力、性被害など、大きな出来事を思い浮かべる方も多いかもしれません。

実際、そのような体験がその後の心身に強い影響を残すことがあります。

一方で、一度の大きな出来事だけではなく、安心できない状況が長く続いたり、人との関係の中で繰り返し傷ついたりした経験が、その後の感じ方や人との関わり方に影響することもあります。

その現れ方も人によって違います。

過去の出来事が突然よみがえる人もいれば、できるだけ思い出さないようにする人もいます。

いつも周囲を警戒してしまうこともあれば、強い負担がかかったときに何も感じなくなったり、頭が真っ白になったりすることもあります。

人との関係の中で、相手の反応に必要以上に敏感になったり、自分の気持ちを伝えることが怖くなったりする場合もあります。

ただし、こうした反応があるからといって、必ずトラウマが原因だと判断できるわけではありません。

現在の困りごとを、すべて過去の体験に結びつける必要はありません。

今起きていることとこれまでの経験を、その人に合った形で見ていくことが大切です。

→ トラウマとは何か、症状や種類について詳しく読む

頭では分かっていても、身体が反応することがあります

つらい出来事に直面したとき、私たちは考えて対処するだけではなく、身体も危険に対応しようとします。

身構える、逃げようとする、身体が固まる、感覚が遠くなるなど、その場を乗り切るための反応が起こることがあります。

出来事が終わったあとにも、似た状況や何らかのきっかけに触れたとき、こうした反応が自動的に起こる場合があります。

そのため、

「もう安全なのだから気にしないようにしよう」

「過去のことだから忘れよう」

と思っていても、身体の緊張や不安がなかなか収まらないことがあります。

これは、本人が意識的に過去にこだわっていることとは別のことです。

だからこそ、考え方を変えることだけではなく、今、自分の心や身体にどんな反応が起きているのかを知り、安心できる感覚を少しずつ取り戻していくことが役に立つ場合があります。

過去を詳しく話すことだけが、回復ではありません

「トラウマを乗り越えるためには、過去の出来事と向き合わなければならない」

「つらかったことを全部話さなければならない」

と考えて、怖くなる方もいるかもしれません。

けれど、過去の出来事を詳しく話すことだけが、トラウマからの回復ではありません。

今どんなことに困っているのか。

どんなときに反応が強くなるのか。

何があると少し安心できるのか。

自分の中で起きていることに気づいたとき、どうすれば今に戻ってこられるのか。

まずは、現在の自分が安全や安心を感じられる方法を増やしていくことから始める場合もあります。

過去の体験を扱う場合にも、その人の状態やペースを大切にしながら進めることが重要です。

トラウマからの回復

回復は、過去を忘れることや、つらい記憶を完全になくすことだけを意味するものではありません。

過去の体験を思い出したとしても、それに圧倒されることが少なくなる。

身体が反応したときに、「今、自分に何が起きているのか」に気づき、現在に戻ってこられるようになる。

これまで危険に感じていた場面でも、「今は大丈夫かもしれない」と感じられる経験が少しずつ増えていく。

人との関係の中でも、自分の気持ちや境界を大切にしながら、距離や関わり方を選べるようになる。

回復のあり方は、一人ひとり異なります。

過去に起きたことをなかったことにするのではなく、過去の体験に今の生活を支配される範囲が少しずつ小さくなっていくこと。

それも、トラウマからの回復の一つの形です。

回復については、別の記事でもう少し詳しくお伝えしています。

→ トラウマの乗り越え方・回復のプロセスについて読む

カウンセリングで一緒に見ていけること

カウンセリングでは、最初から過去のつらい体験を詳しくお話しいただく必要はありません。

まず、今どんなことに困っているのか、そのとき心や身体にどんなことが起きているのかを一緒に整理していきます。

必要に応じて、安心できる感覚や落ち着きを取り戻す方法、人との関係で起きていること、自分の気持ちや身体の反応、過去の経験とのつながりなどにも目を向けていきます。

大切にしているのは、過去を無理に掘り下げることではなく、その方が今どこまでなら無理なく扱えるのかを確認しながら進めていくことです。

過去の体験だけに目を向けるのではなく、これからどのように生活していきたいのか、人とどのように関わっていきたいのかも一緒に考えていきます。

→ トラウマ・愛着と人間関係の悩み