「まいっか」で過食や自己嫌悪を乗り越える!心を軽くする手放し方

クライアントさんとお話ししているときに、時々こんな言葉を聞くことがあります。

「まいっかって、全部どうでもよくなっちゃうんです」

ご本人は少し自責的に話してくれるのですが、私はいつも心の中で「でも、まいっかって言えるのは強みでもあるな」と感じています。
実際に、過去に摂食障害から回復した方が「まいっかができるようになったんです」と話してくれたこともあります。

みなさんも「まいっか」という言葉、日常で口にすることはありませんか?
たとえば、うまくいかない日が続いたときに自分を責める代わりに「まいっか」と言ってみたり、何かに挑戦する前に「まいっか、どうせ私には無理だし」と諦めたり。

言葉の意味は同じでも、使うタイミングや気持ちの向きによって、「自分をゆるす力」として心を支えることもあれば、逆に「前に進むのを止める力」としてブレーキになることもあります──そんな感覚を日々のカウンセリングを私自身の生活でも実感しています。

そんな支えにもブレーキにもなる「まいっか」を、どんな気持ちから使っているのかを見つめることは、自分を理解し労わるための大切な手がかりになりそうです。

今回は、摂食障害の文脈を交え、「まいっか」の効能や落とし穴、健やかに使うためのヒントを整理してみます。

目次

「まいっか」の効能──手放す力

ネガティブループを断ち切る

たとえば、今日は少し食べ過ぎてしまった日。
「またやってしまった……」と自分を責めて、罪悪感に沈んでしまうこともあるかもしれません。

そんなとき、「まいっか」と言えることは、自分を苦しめる思考から距離をとるための、とても大切な力になります。

心理学的には、これは「認知的距離をとる」というスキルに近いものです。ネガティブな思考に巻き込まれず、一歩引いた視点で自分を見られることは、心の健康に直結します。

「まいっか」は休憩ボタン

どうすることもできないことに、何度も心を引っかけてしまうと、余計につらくなります。
「まいっか」は、そうした負のループから一時的に離れるための「休憩」のようなもの。

これはセルフコンパッション(自分への思いやり)の一部でもあり、「苦しいけれど、今は休もう」と自分に優しくする姿勢でもあります。

結果として気持ちに余裕が生まれ、次の一歩を踏み出しやすくなることもあるのです。

行動に移すのを妨げる「まいっか」

「避ける」ためのまいっか

一方で、一見やさしそうに見える「まいっか」が、自分の本音や行動を止めてしまうこともあります。

  • 本当は相談したり助けを求めたいのに、「まいっか、我慢しよう」
  • 自分の気持ちを表現したいのに、「まいっか、今さら言っても仕方ない」
  • 過食をやめたいと思っているのに、「まいっか、どうせ無理だし」

こうした「まいっか」は、実は“感情回避”の一種。挑戦や変化の前に感じる「怖さ」を直視する代わりに、フタをしてしまっている状態です。

心理学では、感情を避けることは短期的には楽に見えても、長期的にはストレスや不安を強めてしまうといわれています。
たとえば摂食障害の回復過程でも、「まいっか、今日は言わなくていいや」と感情を抑え続けると、心の中に未処理の思いが溜まり、後で強い衝動となって現れることがあります。

自分に問いかける習慣を

そんなときは、「私は何を避けようとしているのかな?」「何を本当は望んでいるのかな?」と、そっと自分に問いかけてみることが大切です。
これはマインドフルネス的なアプローチでもあり、「今の気持ちを評価せずに観察する」ことにつながります。

たとえすぐに答えが見つからなくても、その問いかけはもう避けていた感情に近づこうとしているということ。
そして、そう問いかけること自体が、「私は自分の気持ちを大切に扱おうとしている」という姿勢でもあります。
その小さな動きが、後の大きな変化につながっていきます。

ちょっとうまくいかなかったときの「まいっか」

ゼロか100か思考から抜け出す

  • 過食をやめようと思っていたのに、また繰り返してしまった
  • 人に優しくしようと思ったのに、ついきつく当たってしまった
  • 完璧を目指していたのに、途中でくじけてしまった

そんな「ちょっとの失敗」に出会ったとき、
「もうダメだ」「私はダメな人間だ」と感じて、すべてを投げ出したくなることはありませんか?

このときの「まいっか」は、ゼロか100かの思考から自分を引き戻してくれる力になります。

成長を見つける「まいっか」

  • 「まいっか、またやっちゃったけど、前より少し早く気づけた」
  • 「まいっか、今回は途中で止められた。前より成長してる」
  • 「まいっか、完璧じゃないけど、私なりにがんばった」

これは、心理学でいう「リフレーミング」に近い考え方です。
できなかったことを別の視点から見直し、小さな成長や努力を認めてあげること。

失敗を許すことではなく、失敗しながらも進んでいる自分を認めることにつながります。

こうして「成長を見つけるまいっか」を積み重ねていくと、自己評価の基準が“完璧にできたかどうか”から“どれだけ前進できたか”へと少しずつシフトしていきます。
この変化は、自分に対して優しくなれるだけでなく、挑戦を続けるためのエネルギーにもなります。

価値に基づいた「まいっか」

ただの諦めと本当の手放しの違い

「まいっか」は便利な言葉です。
でも、自分の心の奥にある「本当に大切にしたいこと」とつながっていないまま使っていると、ただの“逃げ”や“あきらめ”になってしまうこともあります。

反対に、「私はこうありたい」「こう生きたい」という価値観に基づいて使われる「まいっか」には、大きな強さとしなやかさがあります。

価値に沿った「まいっか」の例

  • 自分や他人を責めるより、やさしさを選びたい →「まいっか、今日はこれでよし」
  • 完璧よりも、自分らしくいたい →「まいっか、これが今の私」
  • 長い目で見て成長したい →「まいっか、今日のつまずきも大事な一歩」

このように、価値に基づいた行動は、人生の方向性を定めるコンパスのような役割を果たします。

そこから生まれる「まいっか」は、たんなる諦めではなく「前に進む選択肢」になるのです。

このように「価値に沿ったまいっか」を意識できると、自分の判断や行動に納得感が生まれます。
たとえ小さな一歩でも「自分は大切にしたいものに沿って選べた」と思えることが、安心感や自信につながっていきます。
それは単に気持ちを軽くするだけでなく、長い目で見たときに回復や成長を支えてくれる力になるのです。

「まいっか」を健やかに使うための実践法

ステップ1:立ち止まる

「まいっか」と口にしたとき、まず一度立ち止まりましょう。

  • 「今の自分は何を感じている?」
  • 「何がつらいのか」「何にホッとしているのか」

例えば、過食してしまったときに「まいっか」と思う瞬間があります。そのとき、ただ感情を打ち消すのではなく、自分の心を観察する習慣を持つことが大切です。

  • 「食べてしまった自分に罪悪感を感じている」
  • 「安心感や安心欲求でつい食べてしまった」

こうして感情を言語化するだけで、心の整理が進みます。「まいっか」を言った瞬間に感じるモヤモヤやホッとする気持ちも、後から自分の行動や思考パターンを理解するヒントになります。

特に長く我慢した後や強迫的な行動のあとに出る「まいっか」は、心を休める休憩のつもりでも、無意識に回避になっていることがあります。この違いに気づくことが重要です。

ステップ2:自分の「まいっか」にラベルを貼る

次に、その「まいっか」がどのタイプかを見極めます。

  • 休憩のまいっか:ネガティブループから一時的に離れ、心の回復を優先する
  • 回避のまいっか:怖さや不安から目をそらし、行動や気持ちを先送りにする

例えば、過食後に「まいっか、今日はもういいや」と思ったとします。

  • 「今日は疲れていて、心を休めるために受け入れる」→休憩のまいっか
  • 「どうせまた失敗するから、何も考えない」→回避のまいっか

同じ言葉でも、背景にある気持ちを見極めるだけで、次の行動が大きく変わります。自分を責める必要はなく、「今の私にはどちらのまいっかが必要か?」と問いかけることがポイントです。

ステップ3:価値とつなげる

最後に、「まいっか」を自分の価値観と結びつけます。

  • 「私はどうありたい?」
  • 「私が大切にしたいことは何?」

例えば、過食してしまった日でも、こう考えられます。

  • 「今日は無理に完璧を目指さず休む日として受け入れよう」
  • 「明日から少しずつ意識して行動してみよう」

このときの「まいっか」は単なる諦めではなく、自分の価値に沿った選択です。
自分の価値に沿った子どを意識することで、日常の小さな一歩も前向きな変化につながります。

おわりに

「まいっか」という言葉は、どこか力を抜いてくれるやさしい響きを持っている一方で、私たちの心の奥にある思いをごまかしてしまう危うさも含んでいます。

だからこそ、「どんな気持ちでこの言葉を使っているのかな?」と立ち止まってみることが、とても大切です。

自分自身や自分の心を本当の意味で大切にする「まいっか」──
それは、自分の気持ちに正直に向き合いながらも、やさしさと信頼をもって一歩を選んでいくことにつながります。

今日の「まいっか」が、あなたの心をほんの少し軽くして、その先のあたらしい選択につながっていきますように。

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