「同じように忙しいはずなのに、なぜか平気そうに見える人がいる」
「自分だけがストレスに弱い気がする」
そんなふうに感じて、また自分を責めてしまうことはありませんか?
”ストレス耐性が高い人”を見ると、「あの人はメンタルが強いから」「自分には意志がないから」と思いがちです。でも実際には、ストレスに強い人は”折れない心”を持っているのではありません。揺れながらも、自分を立て直す力を持っているのです。
この記事では、その力がどういうものなのか、そしてなぜ「ちゃんとしなきゃ」と頑張り続けてきた人ほど、それが難しくなるのかについて整理していきます。

上畠 真紀
公認心理師、精神保健福祉士
経験
18年以上のカウンセリング経験(精神科・心療内科)
専門分野
摂食障害、気分障害、トラウマ、対人関係
ストレスに強い人も、ちゃんと不安を感じている
ストレスに強い人は、つらいことを感じない人ではありません。
不安を感じたとき、「不安を感じてはいけない」と押さえ込むのではなく、「私は今、不安なんだな」と一歩引いて自分を見つめることができる。感情に飲み込まれたままにならずに、「では今、自分にできることは何だろう」と少しだけ動ける。
心理学ではこれを「心理的柔軟性」と呼びます。ストレス耐性の高さは、まさにこの力に支えられています。感情をなくす力ではなく、感情に飲み込まれたままにならない力、とも言えるかもしれません。
”ちゃんとしなきゃ”が、揺れを立て直す力を奪っていく
空気を読む、人を優先する、弱音を吐かない、期待に応える——そうやって頑張り続けてきた人ほど、自分の感情に気づくことが難しくなっていきます。
感情を感じる前に「でも頑張らなきゃ」が出てくる。疲れていることに気づく前に「もっとちゃんとしなきゃ」が動く。
すると、揺れたときに自分を立て直す力ではなく、揺れないように自分を固める方向に力が使われていきます。固めれば固めるほど、小さな揺れでも大きく崩れやすくなっていくのです。
こころが苦しいとき、生活が乱れるのは当然のこと
米ビンガムトン大学の研究では、食事・睡眠・運動といった基本的な生活習慣が、心理的柔軟性を通じてストレス耐性に影響することが示されました。言い換えると、生活習慣は単なる健康管理ではなく、感情やストレスを受け止めるための土台になっているということです。
ただ実際には、強いストレス状態では、体は「回復」より「今を生き延びること」を優先します。
だから、眠れない、朝起きられない、食欲が乱れる、動けなくなる——そういったことが起きるのは、意志が弱いからではなく、体が必死に対応しようとしている反応です。
「生活習慣を整えましょう」と言われても、それ自体が苦しく感じられることがある。それは、それだけこころや身体が消耗しているというサインなのかもしれません。
「受け入れる」の次に必要な、小さな一歩を選ぶ力
「自分を受け入れることが大事」という言葉を耳にすることが増えました。
それはとても大切なことです。でも、受け入れるだけで止まってしまうと、苦しさの中に閉じ込められてしまうことがあります。
心理的柔軟性のもうひとつの大切な要素は、「今の自分にできることを選ぶ力」です。
完璧な対処でなくていい。たとえば——
過食したい、と感じたらまず水を一杯飲む。
不安でいっぱいなとき、誰かに「つらい」と一言送る。
動けないとき、シャワーだけ浴びる。
そのくらいの小さな一歩で十分です。
自分を責めることより、ストレス耐性を高める本当の力
ストレス耐性というと「強い心」や「根性」をイメージする人もいるかもしれません。
でも実際に回復につながるのは、無理をしている自分に気づく力、疲れていることを認める力、助けを求める力です。
心理的柔軟性が高い人は、崩れない人ではなく、「ああ、かなり追い込まれていたんだな」と自分を観察できる人です。
自分を責め続けるのではなく、苦しい自分を置き去りにしない。自分を裁くより、理解しようとする。自分の状態に、敵意ではなく関心を向ける。
これは、摂食障害や愛着の問題、生きづらさを抱えている方ほど、とても難しく、そしてとても大切なテーマでもあります。
まとめ|折れない心より、揺れながら戻れる力
「ちゃんとしなきゃ」と自分を追い込んでいるなら、まずは、今の自分の状態に気づいてあげることから始めてみてもいいかもしれません。
こころは、正しくしっかり鍛えるよりも、安全に回復できる状態の中で少しずつしなやかさを取り戻していくものです。
揺れることがあっても、気づける、受け入れられる、少し選び直せる、そして自分を見捨てない——そうした力が、揺れながらも自分を立て直していく本当の強さになっていきます。
※参考文献
国際医学短信(2026年4月27日配信)「ストレス耐性を高めたければ、まずこの習慣を― 食事・睡眠・運動が心理的柔軟性を介して影響」
Begdache, L., Cherry, J., & Talkachov, A. J. (2025). Dietary and lifestyle factors and resilience: the mediating role of psychological flexibility. Journal of American College Health, 1-12. https://www.tandfonline.com/doi/10.1080/07448481.2025.2597907
【さらに詳しく】
「ちゃんとしなきゃ」が止まらない背景には、長い間自分の感情を後回しにしてきた経験が関係していることがあります。

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